『霞シリーズ』番外編集

□理由さえ無いような・・・
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・・・―――「おや珍しい。今日は絳攸殿を連れていないんですね、藍将軍」


後ろからそう声をかけられて、楸瑛は振り向いて軽く笑った・・・


「べつに、1日中ずっと一緒にいるわけじゃないよ?」



「で?今は黎深殿が絳攸殿の傍に居られるんですね・・・」

アッサリ返されて、楸瑛は微笑うより溜め息をひとつ、吐いた・・・



「ね、静蘭、君、それ絳攸を、というか、絳攸と私と、黎深殿を、甘く見すぎだよ。そこまで不必要に、甘くはないよ、私も、ましてや黎深殿は尚更ね・・・」


甘い甘い、と繰り返し言われてきたけれど、本当はそんなに、甘くなんか無い・・・


移動はともかく、昼の執務時間中のことは、基本的には楸瑛は絳攸をそれほど気にしてはいなくて、今の時間も、多分吏部に居るだろうと解っているから、それでよかった・・・


黎深殿が絳攸の傍に居るかどうかは、知らない・・・



驚いたように、珍しく目を丸くした静蘭が可笑しくて、楸瑛は思わず、クスクスッと声を立てて笑った・・・



「解るけどね。普通と少しだけ、違って、移動に誰かがついて行くから、そればかりが目に付いて、そうやって、普通と少し違うところを1度、見つけてしまうと、そういうところばかりが、どうしてか無意識に印象に残って、実際に見て確かめたわけじゃないことまで、勝手に、思い込んでしまうのは・・・」



多分、静蘭も、燕青でさえも、そうで、葵長官や旺季殿でさえ、そうなのだろう・・・


まぁ実際に、多少過保護に心配してしまいがちなところが、私にも、黎深殿逹、『お父さん』にも、有るは有るのだけれど・・・


そんなに不必要に、甘やかしてなんかいないのに、

「でも、今みたいに、いちいち説明なんかしていられないから、絳攸は沢山、嫌われるんだよ。それが少し、可哀想だとは思うから、私は沢山絳攸に、『大好きだよ』って、言葉にしてはいるけどね―――」
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