60万企画
□そして見つけるものは(双花)
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・・・―――「さて、そろそろ帰らないと黎深殿に怒られるかな?いくら軒で送るとはいえ、暗闇が苦手な君を、夜が更けきってから帰すわけにはいかないしね、送るよ」
ひとつ息を吐いてから、いつも通りの優しい微笑みで言った楸瑛に、絳攸もコクン、と頷いた
「黎深様に心配かけるのは嫌だ・・・」
独り言のように呟く絳攸に、自分から言い出したとはいえ、楸瑛は苦笑混じりで微笑った・・・
「まったく君は、本っ当に黎深殿が大好きだねぇ。1番のライバルが、他の同じ年頃の男ではなくて、好きな子な父上だなんてね。喜ぶべきなのか悲しむべきなのか、どっちだろうね・・・」
言うと、絳攸は呆れたような表情(かお)をするけれど、こちらとしては、半ばは冗談としても、半ばは本気なのだ・・・
恋人と呼べる関係になってから数年・・・
けれどとてもではないが、勝つどころか、『並び立てた』と心から思えたことさえ、1度として無いのだから・・・
ああ、けれど・・・
これからはようやく、少しずつは違って来るかな?
それでも少しも『勝てる』、とは思えないところが悔しくはあるけれど、せめて、『並び立てつ』くらいには、なれたらいいと思う・・・
今までずっと、諦めていた未来の約束を、ようやくしたのだから・・・
ようやく、出来たのだから・・・
「本当に、こんなことならもっと早く、君からの質問に答えるんだったな・・・」
呟いただけの言葉に
「楸瑛?」
と隣から疑問符が返ってきて、
「何でもないよ」
と返した・・・
ああでも、出逢ったあの時、君がもう少し強くても弱くても、きっと駄目だったように、
今夜交わした言葉も、今だから上手くいったのかな?
答えは無いけれど、
もうその答えは、要らないね―――