60万企画
□そして見つけるものは(龍珀)
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・・・―――ふと何気なく視線を少し横に転じると、琴が目についた
「珀の琴が聴きたい」
「は?いきなり何だ? ・・・まぁいいか。でも琴を聴くなら、お前は聴き手。笛は無しだぞ!」
「で?聴きたい曲名はなんだ?」
1度ずつ全ての音をならして確かめてから訊いた珀明に、龍蓮は意外にも、不意を突かれたような表情(かお)をした・・・
「なんだ?聴きたい曲が浮かんだから、いきなりあんなことを言ったんじゃなかったのか?」
この男は・・・と言いたげにほんの僅かだけ眉を寄せて見せた珀明に、龍蓮から応えがあった・・・
「では、蘇芳をお願いする・・・」
『蘇芳』は、有名な恋歌・・・
甘い、甘い、恋歌・・・
「『蘇芳』・・・。・・・『想遥恋』じゃなくてか?」
『蘇芳』とまるで対をなすように有名なのが、『想遥恋』・・・
永遠に叶うことのない
永遠に想い続ける、
片恋の恋歌・・・
「珀は、どちらも弾けるのだろう?」
「・・・、弾けるよ・・・」
「では、私は『蘇芳』がいい・・・」
そう告げただけの声がなぜか、とても愛しく聞こえて、珀明は少しだけ、
泣かないけれど、
泣きたいような気持ちになった―――