短編小説

□栄光が映す陰影
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男は明日、セレモニーを合わせれば、一週間をかけて行われる剣技大会の決勝を控える身であった。
申請した彼の名はライアン。
実名であるかどうかは不明だが、腕は間違いなく確かであった。

「過去の栄光など、明日も生きる保証を持つ者にのみ意味がある」

そう言った時、酒場の中心が湧く。

「明日の優勝はレスタードに決まってる。何せヤツは領主エグラムの息がかかってるって噂だ!主催は損なんかしねぇ。王国一の剣士を買収したんだ!」

店主の顔色を見れば、振り返らずとも男に向けた言葉だと分かる。
気にする事なく再びグラスに視線を落とす。
再び視線を上げると店主の顔が目に入った。
視線は男の剣に注がれている。

「良物の剣だが、この国じゃ値は出ないな。獅子の紋様が刻んである。三年前から獅子の紋様は不幸を呼ぶとされてる。ダンナも知らない訳じゃないだろう?」
「勿論だ。三年前までは、俺の騎士団の旗印だった」
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