短編小説

□栄光が映す陰影
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店主の顔がみるみる驚愕の表情に変わる。

「あんた!まさかギルヴィス・シュリンプスか?」

敢えて声を低めているのは、この領土に於いて彼の本名が声を上げて呼べない物である事を物語っている。
ギルヴィスは、店主に明確な返答をせずに、外套で剣を隠すと店主の前に代金を投げて席を立つ。
彼の動向は店中の客の意識を集めていた。
一瞬にして静まる客を割ってギルヴィスは店を後にした。


夜風がギルヴィスの頬を撫で付けて、過ぎ去っていく。
酔いの体には心地よいが、不快を呼ぶのは、夜闇の静けさの方だった。
耳を覆いたくなる衝動に襲われながら、目だけをギラつかせて宿への道を歩く。

「チッ!あの日と同じ天気か」

瞼の裏に、鼓膜の奥に付着した過去の悪夢が、酔い以上に足取りを奪う。
道脇の石に腰かけて、満天の星を仰ぐ。
思い出すあの日の夜に震える肩を強引に押さえ込んだ。


そう、三年前のあの日‥‥
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