短編小説

□栄光が映す陰影
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仲間の言葉もそれほどプレッシャーに感じる事はなかった。
十五歳で入団し、戦場を駆け回る内に獅子の牙と呼ばれる様になった。
結婚し、子供が産まれ、順風満帆の人生は、剣技大会の栄光によって彩られる。
何をやってもうまくいく。少なくとも明日の決勝で負けるなどとは思えなかった。

「明日が控えてる。今日は宿に戻ってゆっくり休め」

そう言ってギルヴィスの隣に座るのは、副団長のガレンスだった。
物静かで無骨な副団長は、配下からの信頼も厚く、指揮をとれば粘り強い、危機に陥っても冷静に対処できる強さを持っていた。
ギルヴィスが先陣を率いて縦横無尽に駆け回り、武勲を上げる事が出来るのは、間違いなく彼と団長の力だった。

「分かってますが、私の為に皆集まってくれてますから」
「終わるのを待っていたら朝になっちまうぞ?酔いが抜けなくて負けたなんて事になったら末代までの恥だ」
「それは困りますね」
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