短編2
□まわる、
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まわる、まわる。
わたしたちは語り合う。騒々と騒がしい店の中で。
カチャリ、と銀器と皿の当たる音がする。彼女がスプーンを置いたのだ。
「ねえ」
にっこりと、彼女は笑った。
「ねえ、」
彼女の皿に、料理が少しだけ残っていた。あと、スプーンで一掬いか二掬い分。私もカチャリとスプーンを置いて、それから飲み物を口にする。
温かい。
「ねえ、お願いがあるの」
なあに、と私は聞き返す。彼女は目線を逸らして、右の耳飾を弄った。揃いで買った、十字の飾り。それが光を帯びる。
「お願い、私と一緒に――」
カチャリ。彼女は再びスプーンを取った。料理が彼女の口へと運ばれる。
「私と一緒に、死んで頂戴」
最後の料理が、彼女の口へと消える。それを見て、私は答えた――
まわる、まわる。
まわる、