短編2

□その人は、微笑んだ。
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「          」



 何か言っている。
 何を、言っているの?
 ねえ、君は誰……





 ふわり、とその人は優しく微笑んだ。
 何か言っている。
 でも、聞こえない。
 ねえ、君は何を言っているの?
 その人は悲しげに、ふわりと微笑んだ。





 指を差す。
 その人の白い、細い指。
 指の先へ視線を向けると、明るい光。
 光の筋はまるで道のようで、その先へ進めと促すよう。
 その人へと再び視線を向け、尋ねてみる。
 ねえ、この先へ行けばいいの?
 その問いに、その人はふわりと嬉しそうに微笑んた。





 光の道を、駆ける。
 なぜだか分からないけれど、心が急いでいるようだ。
 走って走って、走った。
 いくらか走ったところで、ふと後ろを振り返った。
 その人は遠くなったその場所で一人、ただただ微笑んでいた。
 ねえ。
 ねえ、君はそこにいるの?
 ずっと、そこにいるの?
 その人はふわりとしたその微笑みを、少しだけ翳らした。













 ねえ、君は一人?
 一人で、ずっとそこにいるの――?











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