短編2
□ふわふわ毛糸の。
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「ぴよ」
呼ばれて振り返る。
そうしたら見知った顔を見つけて、ぴよの顔は喜びに緩んだ。
「みー」
相手の名前を呼んで、右手を振った。
その右手は、ふわふわ毛糸の手袋で包まれている。
小さな白いボンボンのついた、ぴよのお気に入り。
今日はあたらしい白のワンピースにはじめて袖を通した日。
このワンピースの腰の部分を飾るリボンがお気に入りで、はいてきた白のボンボンがついたブーツもお気に入り。
お気に入りにかこまれてお出かけ中のぴよは、とてもごきげん。
さらになかよしのみーと会って、ぴよは嬉しくて嬉しくてしかたがなかった。
ひよひよと、ぴよのきげんを表すようにぴよの耳はゆれている。
まっしろなそれは、ぴよの自慢のひとつだった。
「きのうぶり、ぴよ」
みーのうす茶の耳も、嬉しそうにゆれている。
それを見て、ぴよはまた嬉しくなった。
「きのうぶり、みー」
ばったりと、きのうも会ってきょうも会う。
嬉しい偶然。
ぴよとみーは、手を握ってふたりで笑いあった。
そして、手をはなして。
「またあした、ぴよ」
別れのあいさつをする。
「またあした、みー」
あしたも会えるといいな。
会えると、いいな。
あしたの偶然を願いながら、ぴよはみーにむかってふわふわ毛糸の右手を振った。
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