短編2
□冷たい世界
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白い、息が。
大気へと流れ出る。
その代わりに、冷たい空気が体の中へと入り、肺を凍らせる。
「は、あ、」
喉の奥から声を漏らして、震えた大気は音となり辺りへ振りまく。
「つめたい、」
大気が、全てが。
「つめたい、よ」
冷たく、凍えるその大地。
ずっと昔から、この大地は冷たさ以外を持たなかった。
大地は冷たく、空から降るのは寒さの象徴である白い花――雪。
そこは、雪の舞う大地。
毎日、ずっと、永遠に。
白い雪が降り、積もり、踏み固められ、氷となり、また白い色へと染められてゆく。
永遠と繰り返されるそれは、一体いつから繰り返されているのだろうか。
それを知る者は、今は、誰もいない。
冷たい世界。
「あたたかい、」
と、その言葉が世界に存在した頃。
その頃を、今は誰も知らない。
知る者は全て死に絶え、知らぬ者も死に、僅かに残る、知らぬ者。
冷たさに麻痺したその者たちは、けれど稀に思い出す。
世界は冷たい。
そして思い出した者は、ただ冷たさに打ち震え、つめたい、つめたい、と呟くのだ。
「つめたい、」
「つめたい、よ」
さあ、
せかいはいつまでつづくのだろう――