短編2

□狂い咲き
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 雪が降る。
 ひら、ひら、ひら。
 寒空の中、僕は見上げる。
 ひら、ひら、ひら。
 ――ああ。
 雪ではない。
 真っ白な足跡の上に降る、それは。
 薄紅色の――
「桜の花」
 ひら、ひら、ひら。
 花びらが、降る。
 それは。
 ひら、ひら、ひら、と。
 ああ、君が。
「君が咲かせたんだね」
 美しい、うつくしい花。
 ひら、ひら、ひら。
 誘われるように、花へと近づく。
 ふらふらと、誘われる。
 そして、
 手を伸ばして――
 かたい、その幹に触れた。
 君は。
「君は、この下に眠っているんだね」
 これは。
 この木は。
「うつくしい、君の墓標」


 きみはねむっている。
 さくらのさく、そのしたで。

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