短編2
□白い雪
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はらはらと、天から白く冷たい雪が降る。
けれど僕は知っていた。
それが、単なる雪などと生易しいものではないということを。
冷たいそれは、美しく凍えるだけの雪ではないということを。
僕は知っていた。
けれど僕は僕の知っていたことを、誰にも話しはしなかった。
だって、誰も信じないでしょう?
この雪が、世界崩壊の最終警告だ、なんて。
信じやしないでしょう?
白くて美しく冷たい、悲しみを帯びたこの雪が。
世界を覆って、白く覆って、世界を美しく染め上げて。
そして、そうしてその白が溶けて大地に染み込んだら。
世界から、白く冷たいそれが消えたら。
そうしたら、世界は崩壊へと傾いてゆく。
最初は緩やかに、けれど、確実に。
雪が溶けたら。
もう誰にも止められやしない。
僕はそれを知っている。
けれど、誰にも話しはしない。
春は始まり。
始まりは、春。
春に、世界は崩壊へ――