短編2
□ナイフ
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わたしは鋭く研ぎ澄ましたナイフを、振り上げた。
喉の奥、腹の底から声を絞り、吐き出す。
心と命と、わたしのすべてをその声と握りしめたナイフに込めて。わたしは、振り下ろした。
鈍い音。衝撃。
めり込んだナイフの銀色は、半ば隠れて。わたしは、手の色が変わるほど強く握っていたナイフの柄を離した。
「は――あは、」
ナイフのめり込んだそこに、指先で触れる。薄茶のそこは、ざらりとしていて。
「はは、あははははは」
見上げると、美しく薄紅色の花が咲いていた。――満開、に。
「あっ――はは、ははははは」
満開の桜のもと、わたしはあいつを呪ったのだ。
「ははあっ、あはははははは」
わたしは、笑った。