短編

□禁忌
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 禁忌、というものがある。


 禁忌――言ってはならぬこと、してはならぬこと。
 禁じられているもの、忌まわしき言動。



 この国ではすべてが、「禁忌」だった。



 話すことも、食べることも、眠ることも。
 全てが禁忌だった。
 犯してはいけない原則。
 犯せば、その国に存在することを許されない。
 そこに存在するために、全てのものはその律を遵守する。
 話すことも、食べることも、眠ることも。
 見ることも、聞くことも、触れることも。
 全てが禁忌。だから、全てを遵守していた。
 何もせずに、禁忌を犯さずに。
 律を遵守してそれらはそこに在る。
 在ることを、存在を許される。
 存在を、存在を、存在を。
 それを許されるためだけに、それらは禁忌を犯さない。律を、破らない。
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