お題

□Who am I...?
2ページ/6ページ

 目を覚ます――意識が浮上して、気だるい余韻に身を浸しながらも瞼を持ち上げ、何度も下りてくる瞼を何度も持ち上げて意識を覚醒させる努力をする。それでも意識はまだぼうっとしていて、上半身を起こして無理やり自分自身に「目を覚ました」ことを自覚させた。
「ん……」
 声が漏れる。漏れた声も、何だかぼうっとしているようだ。
「ふ、あ、」
 伸びとともに漏れたその声が聞こえたのか、す、と微かな音を立てて襖が開いた。その向こうに、足が見える。
「おはよう、あさぎ」
 足に、そう声をかけられる。覚醒しきれない意識は、おはようの挨拶に半ば反射で挨拶を返す。おはよう、と。そしてその、自分の発した「おはよう」に刺激されてか、違和感を持った。何か、不思議な感覚。
 襖に半ば隠れた足を辿り、その足を持つ顔へと視線を遣る。
「ねえ」
 その顔へ、声をかけた。なに、とその顔は柔らかく微笑んでいる。
「ねえ、あさぎってなあに?」
「は、何言ってんの。お前以外に何があるって言うんだよ、あさぎ」
「あさぎ?」
「そう。またいつもの遊びだね、今度はキオクソウシツごっこかい?ほら、馬鹿なことやってないで早くおいで。ご飯できてるよ」
 うん、と頷く。ご飯は楽しみだ。
 でも、と。あさぎは思った。


 でも、わたし。
 記憶なんて持ってないわ







+
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ