短編

□赤と黒の目覚め――目覚めの後
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 灯坂――
 その名前が、更紗に響く。
 灯坂――灯坂――灯坂――灯坂――


「灯坂――」

「あなたは最期に、願いを叶えたのね――」


 赤い神様と黒い神様に出会って。
 そして、世界を滅びへと導いた。


「ああ、灯坂――」

「灯坂、あなたは――」

「証明したのね、あの物語が真実だということを」


 更紗は、歓喜に包まれて。
 喜びに包まれて。
 感情のままに、世界へ叫ぶ。


「ああ、世界――世界よ、滅びて――」

「灯坂――あなたが導いた滅びなら、私はそれを受け入れる――」

「ねえ、双子の神様――滅びの神様」

「早く、世界を滅ぼして頂戴――」


 ふふふ、あはは――
 更紗の笑い声が、世界に届く。


 双子の神は、顔を見合わせて――
 くすり、と笑った。


「ねえ、黒」
「なに、赤」
「早く次へ行きましょう」
「世界を滅ぼしにいこう」
「そうしましょう」
「そうしよう」
「では」
「手近な世界を」
「滅ぼしましょう」


 そうして、笑い声は途絶え――
 余韻が、残った。


 白い二つの人影は。
 次の獲物を求めて彷徨い出す。
 世界が滅びる、その時まで。
 その彷徨は、終わらない。



 赤い色に全ては穢され、
 黒い色に世界は包まれた。

 世界の滅びは、止まらない。
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