長編
□蒼杜と紅
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四月十三日 アオト
クレナイ。
そちらではもう桜が咲いているんですね。
こちらはまだ蕾のまま、暖かくなるのを待っています。北と南ではだいぶ気温の差があるようで、暖かなそちらが少し羨ましいです。
クレナイ、君に向けてこの日記を綴り、君がこの日記を読んでいるのだと思うと何だかとても気恥ずかしいです。
何だか自分のことを綴るはずなのに、上手く自分のことを綴れない気もします。
そんな僕の日記だけど、飽きずに読んでくれると嬉しいと、そう思っています。
君と日記交換の約束をしてから君の日記が届くまでの一ヶ月間、そして君の日記が届いてから今日までの数日間。
ずっと何を書こうか、何を書けば良いのだろうか、とそればかり考えながら生活してきました。
けれど僕の日常はどれも代わり映えせず、しかも書こうと思っていた少しの事柄さえも、この日記を綴り出した途端に忘れてしまいました。
なので僕の日常なんて欠片も入っていない、君への返事ばかりの日記になってしまったことを許してください。
それでは、君の日記を楽しみに待っています。
アオト