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□キミを探す旅
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俺には、唯一愛したヒトがいた。

彼女は、突然俺の前から姿を消した。

俺に何も言わないで──




『健宏くん、今度は何処へ行こうか』


彼女の声が、俺の頭の中で響き渡る。


『私、絶叫系はダメなの!高い所はダメッ。……でも、観覧車は好き』


矛盾していた彼女の考え。


『ふふふ。健宏くんと二人っきりだ…。あ、動かないで!怖いんだからッ』


必死に耐えて乗った観覧車。


『うぅ〜…ムードが台無し。本当にごめんね』


申し訳なさそうに謝りながら震える手が、今でも思い出せる。


『!?…エヘヘ。健宏くんの手って、あったかい』


俺が握り締めた瞬間、彼女はニコッと笑った。


『これからも、ずーっと一緒にいようね』


そう言って、約束したのに──






彼女は……理香は、俺の前からいなくなった。








「健宏、何処に行くの?そんなに大きな荷物を持って…」


母さんが、玄関で靴紐を結んでいた俺に問いかけた。

俺は振り返らずに返事をする。


「理香を探しに、ちょっと行ってくる」

「……そう。もし理香ちゃんに逢ったら、よろしく言ってね」

「あぁ。行ってくるよ、母さん」

「行ってらっしゃい。必ず帰ってくるのよ」


涙を必死に堪えているのか、鼻声になっている母さんの声を聞きながら、俺は玄関の戸を閉めた。




ごめんな、母さん。

俺は、理香を見つけるまで帰らないから。







さぁ、旅に出よう。








愛しい彼女を探す旅へ──








キミを探す旅








*fin*




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