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□恋は駆け引き 前編
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「そぉセンセー!この問題教えて〜」

「あたしが先だよぉ」

「後でこの問題も教えてくださ〜い」

「皆さん、後でちゃんと教えますから、まずは授業を受けてくださいね」

「「「はーい!」」」


あたしは、クラスメイト(殆ど女子だけど)に囲まれている奏先生をじっと見た。
最近女子の間では、あたしのクラスの副担任であり数学教師の奏先生が大人気だ。
優しくて、教え方も上手くて、恰好良くて……。
誰が見ても憧れる先生だ。
そしてあたしも、奏先生に憧れる一人。
……ううん。憧れなんかじゃない。
あたしは、先生に恋をしている。
先生の周りに人がいるだけで嫉妬しちゃうくらい、この想いは強いんだ。


「……さん、……がさん、――春日さん!」

「あ、はいっ」

「具合でも悪いんですか?ずっと俯いていましたけど」


やだ、あたしったら奏先生の授業中だったのにずっと考え込んでた!
あ、謝らなくちゃ。


「違うんです。ちょっと考え事をしてて……ごめんなさい」

「そうですか。今は授業中ですから授業に集中してくださいね」

「はい」

「でも良かったです。春日さんが元気なようなので安心しました」


奏先生はニコリと微笑んだ。
ヤバイ、その笑顔は殺傷能力がありますよ……!
思わず顔が真っ赤になる。
それをまた先生が心配してくれて、あたしは天にも昇る気持ちになった。


授業後、あたしは急いで奏先生のもとに走った。


「先生、さっきはすみませんでした!」

「授業を中断した事ですか?それなら気にしないでください。受験生なら色々と悩みもあるでしょうし」


先生、本当に優しい……!
よし、ここは思い切って……


「あの、奏先生」

「なんですか?」

「放課後、先生の所に行ってもいいですか?相談したい事があって……」

「あぁ、それなら進路指導室に来てください。今日はそこで仕事があるので」

「え、お仕事があるのにいいんですか?」

「構いませんよ。それに、相談事なら他の先生に聞かれたくないでしょうし」


ふわりと笑みを浮かべる奏先生に、あたしは本日二度目のKOをとられた。
これこそ恋は盲目ってヤツね!(あれ、違う?)


「それじゃあ帰りのHRが終了してから、十分後ぐらいにきてください」

「はい!本当にありがとうございますっ」


まさか先生と二人っきりで話が出来るなんて……夢みたい!
あたしはワクワクしながら放課後を待った。
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