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□命の束縛
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昔、誰かが言っていた。


「どうして生きているのだろう?」


そんなの誰に訊いても解るはずがない。

でもあの人は自信満々に答えたんだ。


「命があるからに決まっているじゃない」


僕は思わずこけてしまいそうになったけれど、

今思えばそれは当たっているような気がしてならない。

だって生物は命があるから生きているんだ。

命がなければ“生きる”ことさえできない。

あの人の答えは僕を納得させた。

だけどあの人の最期を僕は納得できない。

他人のために死ぬなんておかしい。

命は自分のためにあるのに。

あの人は言った。


「貴方の役に立てて良かった」


僕は言った。


「そんなのおかしい」


あの人は微笑みながら言った。


「貴方を救うためなら自分の命など惜しくない」


僕はもう一度言った。


「そんなのおかしい」


あの人は最期の言葉を遺した。


「 生 き て 」


その言葉は今でも僕を縛り続けている。

僕は死ぬことができない。

そんな僕は、

あの人のマリオネット。




命の束縛
(逆らえない自分がいた)





ちょっと病んでる少年の話。
あの人に恋愛感情があるわけではないつもりですが、もしあの人が女性ならば恋愛感情があったかもしれません。
時代背景的には戦後ぐらいの話でした。
暗くてすみません……。

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