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□Seven's Soul
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これから私が話すお話は、私が中学生の時のお話です。

……どうせ『本当に体験したことです!』って言っても信じてくれないでしょうが、本当に体験したんです。

私、吉村菜々の恐怖の心霊体験、どうぞご静聴ください。


「……菜々、お前は一体何がしたいんだ?」


ちょっと七紀、邪魔しないでくれる?

今から私が皆さんに恐怖の心霊体験を


「いや、だから、お前の存在自体が既に心霊だから」


失礼ね!

私のどこが心霊なのよ。


「足がないところとか、宙に浮いてるとか、触りたくても触れないところとか、いっぱいあるぞ」


やだ、七紀ったら私に触りたいの?

絶対触らせないわよ!


「……だから触れないし、むしろ触りたくないし」


酷い!

それは失礼よ、本当に!

七紀、今アンタは世界中の女の子すべての敵になったわ。


「話を逸らすな。だから、いい加減戻って来いっつーの」


いーやーだー!

絶対戻りたくないぃ。


「ふーん。戻りたくないわけね。じゃあ力尽くで……」


な、七紀!

数珠なんて持って何やってるのよっ。


「ん、今からお前を成仏させてやろうとしてるだけじゃん。だってもう戻りたくないんだろ?」


そういう意味じゃないの!

私はただ、媒体の中に戻りたくないだけで、この世界にはずーっといたい!


「俺を媒体呼ばわりするな。よし、マジで成仏させてやる!」


いやー!

許してください、なーなーきーさーまーっ。


「吉村七紀が命ずる。この者の魂を……」


うわっ、マジで詠唱してるしっ。

ねっ、止めて!

私、まだ死にたくないよぉ……。


「既に死んでますけど」


まだ、生きてるもん!

私は、お兄ちゃんの中で生きてる!!


「……ったく、こんな時だけ兄貴呼ばわりするんだな」


七紀、止めてくれるの……?


「我が身体の中に戻したまえ。――強制送還!」


え、嘘!?

七紀の嘘吐きー!!


「いや、戻さないとか誰も言ってないから。というわけでお帰り、妹よ」




Seven's Soul
(“ななき”と“なな”の魂)





霊媒師の少年と幽霊の少女のお話。
兄とか妹とか言ってますが、血の繋がった兄妹ではありません。
その辺で自縛霊になっていた菜々を、七紀が自分の身体に繋いで無理矢理自縛から解き放ってあげただけです。
そして記憶喪失の菜々に、名前をプレゼントしてあげたのでした。
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