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□終焉へのカウントダウン
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私は今、今世紀最大のミスをおかした。

冷や汗が額や背中を流れ落ちる。
こんなミスをおかすなんて、私は一体どうしたのだろうか。
目の前に並ぶ数字の羅列を、私はもう一度見直す。
……明らかに一つずつずれている。

しかもずれ始めたのは最初から数えて二つ目だ。
このままでは、私の人生は終焉を迎えてしまう。


「残り三分」


無情にも、私の頭上で地獄へのカウントダウンが開始された。
残り三分で、私はこの数字を変更できるのだろうか。

いや、できなければ全てが水の泡だ。
今まで必死に生き抜いてきた人生を無駄にしたくない。
こんな数字に負けてたまるものか。


「大澤、大丈夫か?」


私と共に戦ってきたタイサが、小声でそう呟きながら私の顔を覗き込む。
あまりの緊張に話せない私は、頷くことでどうにか応えた。
早くこの部屋から脱出して、水を飲みたい。


「残り二分」


いつの間にか、一分が経過していた。
ま、待って。
私はまだ変更し終えていない。
それどころか、まだ一つも変更していないのだ。
このままでは本当に終わってしまう!

変更しようと慌てたのがいけなかったのか、私は数字を変更できる唯一の物を落としてしまった。
私は現在動ける状況にないので、拾うことができない。
神は私を見捨てるというのだろうか。


「残り一分」


また何もせず一分が経過してしまった。
アレを落とした今、私は絶望の淵に立たされている。
残り三分の時点で冷静になって変更していればよかった。
今思えば、私なら三分で全て変更できる。

しかし、今更悔やんでも仕方が無い。
もう残す時間は一分なのだ。
私の人生はもう終わり……。

そんな絶望を味わっていた時だった。


「落ちていたぞ、大澤。もう落とすなよ」


タイサは私が落とした物を拾って渡してくれた。
タイサ、ありがとうございます!
私の命の恩人です。

タイサが拾ってくれた物を握って、私は数字を変更しようとした。

しかし、それはできなかった。


「そこまで。鉛筆を置きなさい」


今、私の人生設計が崩壊した――。




終焉へのカウントダウン




「大澤、一体どうしたんだ。今回は最下位だぞ。しかも正解数が一問」
「……先生、何も言わないでください」


体格ががっしりしていて面倒見が良い故にタイサと呼ばれる担任の言葉に、私は何も言えなかった。
全国マーク模試の数学での正解数一問は、私の人生の中である意味最高の記録となった。





またもや引っ掛け小説(←
なんで消しゴムを落とした時に挙手して先生に拾って貰わなかったのかというと、あまりにも慌てていて忘れていたからです。
多分、パニックだったんですよ。
……引っ掛かっちゃった人がいたらちょっと嬉しいです(またか)

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