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□我が侭な王女 プロローグ
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「何故ダメですの? 私は絶対やりますから!」
「だからダメだと言ってるだろ? 俺の言うことを聞け、我が侭王女」
「きー! 貴方こそ王女の言うことを聞きなさいな!」
「……はぁ。面倒だなぁ」
「急に面倒がらないでくださる? こっちまで気分が悪くなってきますわ」
「どうして俺がこんな我が侭王女の家庭教師をしなくてはいけないんだ」
「こちらだって文句を言いたいですわ。どうして礼儀がなっていない男に勉学を学ばなければいけないのです?」
「アンタは親父さん――王様にでも文句を言えばいいじゃないか」
「貴方こそ言えばいいんじゃないですの?」
「ばーか。俺なんかが言ったら即行で首が無くなるっつーの」
苦笑した彼の表情を、私は見つめることしか出来ない。
「ん? どうした、我が侭王女」
「私には立派な名前があるのです。我が侭王女なんてお呼びにならないで!」
「あ、それは悪かった。だけどアンタだって俺の名前、呼んでないだろ?」
「……せん」
「せん?」
「貴方の名前を知りませんと言ったのです!」
「はぁ? じゃあ一体どうやって俺を雇ったんだよ」
「それは……お父様が貴方を雇ったからで、私は貴方について何も知らされていないからですわ」
「急に小声になったな」
名も知らない彼に家庭教師になってもらいたいとお父様に頼み込んだのは、私。
だって、あの日。
たまたま城下町に出掛けた時に見た彼の表情に、私は――
「そ、それじゃあ名前を聞きますわ。さぁ、自身の名を名乗りなさい」
「え、俺から名乗るの?」
「当たり前ですわ。第一、王女である私の名は知っているでしょう?」
「ま、そうだけどさ……。はいはい、分かりました。名乗りますよ。俺の名は……」
これから、少しずつ知っていけばよいのです。
「……いい名ね。素敵な響きですわ」
「そりゃどうも。さーて、早速歴史から始めるか」
「ですから、私は絶対武術から始めます!」
「だーかーら、王女に武術は危険だってっ」
それでも一生、
『貴方の笑顔に惚れました』
なんて言えない気がしますけどね。
貴方の笑顔に惚れました
(私の恋は彼の笑顔を見た時から)
我が侭な王女と鈍感な青年の話。