Long

□我が侭な王女B
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マリウスを解雇した日の夕食時。
部屋で泣き続けていたラヴィニアは目を真っ赤にしたまま席に着いていた。
手と口は動いているが、心ここにあらずの状態だ。
まるで魂が抜けたかのような状態の娘を心配しつつも、王はラヴィニアに話を持ちかけた。


「ラヴィニア。手紙にも書いていたが、そろそろおまえも伴侶を決める年頃になったと思うのだ。先日、良い見合い話をもらったから引き受けようと思うのだが、どうだろうか?」

「…………」


ラヴィニアは答えないが、王は続ける。


「いや、無理はしなくてもよいのだぞ? その、なんだ。ラヴィニアも色々あって大変だったようだからな」

「……お引き受けしますわ」


ラヴィニアは、淡々と抑揚のない声音で王に告げた。
ラヴィニアの答えに、王は安堵の笑みを浮かべる。


「そうか、引き受けてくれるか。では早速名前を教えよう。ああ、肖像画も届いているから見るといい」

「結構です。お名前は直接本人からお聞きしますし、お顔も会ってからの楽しみにしておきます」


それだけ言うと、ラヴィニアは席を立ち、自室へと引き揚げた。
今の彼女に、マリウス以外のことを考えることなんて出来ない。
忘れようと思っても、自分から手放したのだと思っても、彼のことが忘れられない。
あの日城下町で見た彼の笑顔が忘れられない――。

しかし、自分は王族の人間であって、民のことを一番に考えなければならないのだ。
自分の我が侭でいつまでもマリウスを拘束するわけにはいかない。
彼は元々自由に生きていた。
それを無理やり拘束していたのだから、解放されて彼も万々歳だろう。

ラヴィニアはまた泣き始めたが、日付を超えるといつのまにか眠りについていた。
彼女の頬には、涙の跡がいくつも残っていた。
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