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□我が侭な王女C
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暫く二人で話していたが、いつまで経っても王や王妃、それどころか侍女さえも広間に姿を現さなかった。
不思議に思ったラヴィニアは、クラレンスに問いかけてみる。
「クラレンス様は従者を連れていらっしゃってないのですか? 先程から誰も姿を現さないので、不思議に思っているのですが……」
「僕は確かに城に着くまでは従者といましたが、広間に入る前に、貴女の侍女に入ることを止められました」
「そうなのですか? 私は何も聞いていないのですが、もしかしたら、お父様が二人きりにさせたいのかもしれませんわ」
ラヴィニアが苦笑すると、クラレンスは何かを思い出したように懐から一枚の折り畳まれた紙を取り出し、それをテーブルにそっと置いた。
「二人きりである今なら、ラヴィニア王女にこれをお渡しすることが出来ます。どうぞお読みになってください」
「これは、一体なんですの?」
「僕の正直な気持ちです。最初は渡すかどうか迷っていたのですが、ラヴィニア王女と話して、貴女になら任せられると思いましたのでお渡しします。どうか受け取ってください」
ラヴィニアはすぐに受け取ることが出来なかった。
この紙を受け取ってしまえば、彼との結婚を認めたも同然のような気がしたからである。
ラヴィニアが悩んでいることが分かったのか、クラレンスは苦笑しながらも紙をラヴィニアの方へと更に滑らせた。
「貴女にとって悪いことはないと思います。僕のためではなく、貴女のために受け取ってほしいのです」
「私のため?」
「はい。どうか僕を信じてください」
クラレンスの言葉に、ラヴィニアは受け取ってみようと思った。
もしかしたら、この見合いを成功させようとしている王の画策かもしれない。
しかし、クラレンスの言葉は、自分でも分からないが、信頼に値すると思った。
「分かりました。読ませていただきます」
ラヴィニアの答えに、クラレンスは微笑んだ。
「ありがとうございます。それでは僕の役目は終わったので、これで失礼させていただきます」
「え、まだ読んでいませんわよ?」
「内容についてラヴィニア王女がどう感じたかを聞くのは僕ではないので。ああ、一ついいことを教えます。貴女の自室で、きっといいことがありますよ」
クラレンスは席を立ち、広間から去っていった。
見合い相手の手紙
(そこには真実があった)
To be continued……