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□過去現在未来君
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僕は歩いていた。
どこからどこへ行くのかわからないまま、ただただひたすら歩いていた。
『未来(さき)』は真っ暗だった。
『過去(あと)』も真っ暗で、何も見えなかった。
「何も見えないなら、こんな瞳はいらない」
瞳を閉じた。音が聞こえた。
「大丈夫」
瞳を捨てたせいか、耳を澄ますと良く聞こえた。
「貴方は独りじゃない」
君は一体―…?
「私がいるよ」
瞳を開いた。見えないはずなのに、明るかった。
「出ておいでよ」
何を言ってるんだ?出て来るのは君の方だろ?
「いいえ。出て来るのは貴方の方」
嘘だ。こっち側にノブは―…。
「こっち側にもないわ」
―。
「貴方の『心の扉』は、貴方自身が開くしかないの」
光が、消えた。
「…僕の…『心の扉』…」
いつから閉ざしてしまったんだろう。
「…君のいる世界なら…僕でも笑えるかもね―…」
僕は扉をこじ開けた。