第一章

□第2話『真実の姿』
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 アパートは全焼したが、住人は避難していて無事だったらしい。

 よかった。

 ……遺族に俺のせいにされたらたまったもんじゃないからな。


 それより、昨日あんなことがあったのに隣のアイツは何もなかったかのような顔をしている。


 目があった。
 すぐさまそらした。

「何か?」

 ただそれだけ問うてくる。

「何もねェよ」

「空気おっもぉ」

 俺がサクヤに答えた瞬間、斜め後ろから高い声がした。


 俺もサクヤも無視した。




「ちょ! ムシはないんじゃないの!?」

 喧しい女だ。
 チラリと後ろを見たら、一つ結わきで独特なくせっ毛の髪の女が乗り出してこっちを見ていた。

 するとサクヤが先に声をかけた。

「何だ?」

「私はマキ・スブリシャスっていうの! 席上下だしっ、友達ってことで!」

「……。私は別に友達になるとか言ってない」

「いいの! で名前は?」

 何がいいんだか……。

 サクヤは明らかに不機嫌そうだ。
「サクヤ・コールド」

「そこの男の子はクロウ・セブルスだよね!?」

 俺も入ってたのか。というか、名乗ってないんだが。
 ああそうか、入学式のせいで皆知ってるんだ。

「そうだけど」

 いきなりマキと名乗った女は顔輝かせ、さらに体を乗り出してきた。

「あたし、超尊敬してんだぁ! ドウガ・セブルス! あんたは強いの?」

 父さんの名前を出すな……。

「どうだか」

「じゃああたしと勝負してよ」

「はぁ?」

 何を言い出すんだ……
 しかもコイツ戦えるのか?

「ささ来て来て! サクヤも!」

「え、私も……?」

「おい、俺はいいなんて言ってねェぞ」

 グイッと掴まれ、俺達二人は校庭に連れていかれた。

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