第一章

□第10話『消えてく記憶』
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「ふぁあ」


 欠伸を一つした。


 今は理科っていうつまらない授業の真っ最中だ。


 担当教師が意味不明な単語を並べていく……ホント嫌になるな。


 ところが俺はそんなに成績は悪くなかった。


 しかも、もっと勉強すれば本当はもっと出来る。


 けれど、成績もよかったら余計に注目浴びるし、だからわざわざ勉強はしないのだった。


 退屈だから携帯でも弄ってるか……



 しかしそんな退屈もこれから先に起こる事によって一気に吹き飛ぶなんてこと、考えてなかった。




 授業も終盤に差し掛かったところで、たまたま隣のサクヤを見た。


 様子がおかしい……。


 汗だくになってうずくまっているのだ。

 若干息も荒い。とにかく苦しそうだ。


 気分が悪いのかと思い、声をかけた。


「大丈夫か? 気分悪いのか?」


「ち、違う……記憶が……」


 記憶?


「どうしたんだ?」


 俺がそう言ったと同時に、サクヤはいきなり立ち上がった。


 その音は静かだった教室に響いた。



 そしてサクヤは教室を出て走ってどこかに行ってしまった。


「サクヤ!?」
 マキも立ち上がる。


 教室は、いきなりの出来事にザワザワと騒がしくなった。



「クロウ!どうする?」


 マキは俺に聞いてきた。



 なぜに俺に聞くんだろ?


 まあ、そんな事置いといて、


「マキはタイトのところに行ってくれ。俺がサクヤを追いかけるから……」


 俺はそう答えた。



 アイツは記憶がどうとか言っていた。


 その事に関しては約束がある。


 だから俺がサクヤを追い掛けたかったんだ。



「わかった!」


 マキは何も聞かずに了承してくれた。


「ありがとう」


 そして俺達もそれぞれ走り出した。




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