第一章

□第10話『消えてく記憶』
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 恐い……




 恐い……!




 恐い……!!





 後ろに迫っている黒い何か……。



 あれは“無”だ。


 記憶がどんどん消えてる。


 そのたびに“無”は迫ってくる。



 逃げ出したくてしょうがなくて、気付いたら本当に教室を出て走りだしていた。


 どこへ向かっているかはわからない。


 とにかく逃げなくてはいけない。

 そうしなければ何もかもなくなってしまう!


 しかし“無”はどんどんと速度を上げて私に近づいてくる。



 走り続けたら、学校の近くにある丘に出た。



 前は行き止まり。


 これ以上は逃げられない。



 いや、逃げても仕方ない。逃げたところで私との距離は縮まるばかりだった。




 ――そろそろ私は消えるんだ…


 私は“無”と正面から向き合った。


 もう思い出せる事は少なくなっていた。


 近くにいた人達

 そのくらいしか思い出せない。



 生徒会――


 本当に嫌な奴らなのか?協力しようと思えば仲良くなれたのではないだろうか




 マキ――


 こんな私を親友って言ってくれてあ
りがとう。私も本気で君の事は親友だと思ってるよ……




 タイトさん――


 貴方がいて心強かった。私と同じで魔人の血を持っていて、私だけじゃないって安心できた……



 そして、クロウ――


 約束守れそうにないな……。君を守るって決めたのに。


 ごめん。



 ごめんね……



 なんでだろ……




 覚悟したつもりだったのに、なんでこんなに涙が溢れてくるんだ?



 消えたくない……



「消えたくない!!!」


 私は涙を流しながらそう叫んだ。


 もう“無”は私の体を包み始めていた。


 討伐部のみんな……君達ともっと一緒にいたい。





 クロウ、もっと君と一緒にいたいよ……



 そして、私の体は全て“無”に包まれた。







 私は消えた。








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