幻想曲

□0_SEED,0_DESTINY.
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-White Night-

聖夜、ひとつの奇蹟が物語を紡いでいく・・・。

「此処は・・・何処だ・・・?」
真っ白な息が、静かに凍る程の寒い夜。辺り一面は真っ暗で、雪がシンシンと降り続いていた。自分の部屋にいた筈なのに、廻りを囲むのは、観たコトもない景色ばかり。何がどうなっているのか、さっぱり判らなかった。
「寒い・・・。」
薄着の身体に、冬の冷たさはかなり厳しい。無意識の内に、手で肩を抱いて、少しでも寒さを凌ごうとするが、対した効果は得られなかった。

その時。

「大丈夫、キミ?凄く、身体が冷えてそうだけど・・・。」
「だッ・・・。」
大丈夫だ、と続く筈だった言葉は、かじかんだ唇からは、音になるコトはなかった。
「大丈夫だッて、云いたかったのカナ?とても、そんな風にはみえないケドネ・・・。ボクの幼馴染みもそうだけれど、辛い時にはちゃんと辛いッて云ってくれないと、廻りが困るんだからネ?」
「俺は・・・独りだ。」
何とかそれだけを呟き、相手に威嚇のような視線を向ける。
「キミがそう思うのは勝手だけれど、キミが此処に存在する限り、キミの廻りには誰かがいる。その誰かが、キミを助けたいと思うのは、その人の自由なんだからネ。ボクのようにさ。」
ギュッと手を包まれる。凍えた身体には、それはとても暖かいモノだった。
「ボクの家、直ぐそこなんだ。とにかく、おいでよ。」
にっこりと笑ったその瞳に、吸い込まれるかのように、静かに頷いていた。
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