幻想曲

□0_SEED,0_DESTINY.
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初めてセツナと云う少年に逢った時、脳裏にはシンの姿が浮かんでいた。それは、あの紅い瞳の奥に秘められた、熱いモノが似てるように感じたからなのか。そして、あの時の自分にも重なってみえたのは、きっと錯覚なんかではないのだろう。窓の向こう側を眺める、セツナの横顔をみつめながら、キラはそんなコトを思っていた。
「セツナ君。」
呼びかけに応じたセツナが、こちらを振り向く。真っ直ぐに射抜く瞳のチカラに、一瞬言葉を呑み込むが、その瞳に誘われる(イザナワレル)かのように、空気中の振動が音を生んだ。
「キミの大切なモノッて、何なのカナ?」
「俺の・・大切・・・な、モノ・・・?」
「そう、大切なモノ。」
「・・・・・・。」
「大切なモノッて、大事にすればする程、傷付いていく。只、護りたいだけなのに、色んなモノを背負っていくコトになる。時には、総てを失くすカモしれない。でも、それでも、総てを失くしてはいないんだよ。」
生み出されるままに、言葉を紡いでいった結果、少し纏まりはなかったモノの、それはどうしても伝えたいコトだった。もしかしたら、その行動は自分の自己満足なのカモしれないが、シンや自分のような想いを、他の誰かがするコトなんてない。
「キミとボクが出逢ったコトに、何か意味が在るのなら、きっとこのコトなんだと思うんだ。」
過去と云うパノラマを、頭の中でめくりながら、キラは静かに眼を閉じた。
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