幻想曲

□0_SEED,0_DESTINY.
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「お部屋の用意が出来ましたわ。」
再び戻って来たラクスが、笑みと共に刹那にそう告げた。しかし、刹那の視線はラクスの顔ではなく、その足元に在るモノへと、釘付けになっていた。
「オマエモナー!」
ピョンピョンと跳び跳ねながら、丸いピンク色の物体が、甲高い音で喋っている。
「あッ、それネ。ボクの幼馴染みが造ったんだよ。小さい頃から、細かいコトが得意でさ。名前は・・・。」
「・・・ハロ。」
「ぇッ・・・?」
驚いた顔でキラは刹那をみつめる。知る筈がないのに、知っているのだから。
「俺の知り合いに、同じのを持っている奴がいる・・・。」
刹那の脳裏には、ロックオンの相棒としていつも傍らにいる、翠色のハロが思い浮かんでいた。
「そうなんだ・・・。」
刹那の言葉に、キラは考え込んでしまったが。
「キラ。考えるのは、後になさいませんコト?セツナサンも、お疲れのコトでしょうし。」
「そうだネ・・・。」
ラクスに云われ、一先ず今は休むコトにする。
「では、セツナサン。ゆっくりと、休んで下さいな。」
整えられたベッドに案内され、刹那は言葉を探し呟いた。
「ありがとう・・・。」


ハッとして目覚めると、そこは自分の部屋だった。
「・・・夢?」
夢にしては、リアル過ぎる。キラの総てを赦すような微笑みも、ラクスの優しく包み込む笑みも、こんなにも鮮やかに憶えているのに。こんな人達ばかりの世界なら、きっと戦争なんて起きないだろうと、その暖かさに震えた感覚が、全部夢なんかで在る筈がない。

机の上をみると、カレンダーが立っていた。今日は、Christmasだった。
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