幻想曲

□0_SEED,0_DESTINY.
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-Sky Blue-

ただ、信じていたかった。いつか、果てしなく拡がる空を、みあげる日が訪れるのだと。血に染まり、荒んでいく大地を這うばかりの日に、いつかきっと、終わりがやって来るのだと。そんなのは虚像に過ぎないと、心の片隅で判ってはいたけれど。思い込まなければ、言い聞かせなければ、とっくに心は折れて、死んでいたに違いないだろう。あの時の自分は、架空のモノに縋るコトしか、術を知らなかったのだから。

◇◆◇

ぼんやりと歩いていた。眩しいばかりの輝きを放っていた"モノ"が現れた時のコトを、幾度となく思い出しながら。あの時、あの場の総てを支配した、あの"モノ"が、今度は、頭の中を占領していき、自分の一部となっていく。それくらいに、今の自分にとって、大部分を占めていた筈なのに、それは、眼の前の光景によって、いとも簡単に崩された。
「・・・ッ!!」
息を呑む程の煌めき。言葉を失い、ただ、立ち尽くすコトしか出来ない。陽の光を浴びる蜜色の髪が、清らかさと艶めき、そして、溢れんばかりの輝きを纏って、篝火のごとく、廻りを照らしていく。神なんていないのだと、あんなにも思い知らされたのに、そこにいるのは、紛れもない女神で在ると、渇き切った心が、救いの象徴をみつけたかのように、思っている自分がいて。
'彼女は、降臨して来た。'
そう云っても、過言ではなかった。
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