交響曲

□選んだそら
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「お姉ちゃん!止めてぇッ!」
「メイリンッ・・・!?」
間違いのない妹の声。一度は死んだモノと思っていたが、生きているカモしれないと云われ、そして、やはり生きていたのだ。
「何で戦うの?何で戦うのよッ!?」
必死に叫ぶ妹の声。もし生きていたら、妹は敵になり戦うコトになるカモしれない。そう判っていた筈なのに、実際直面してみれば、そんなコトは無理だと気付かされる。
「どのラクス様が本物か、何で判んないの!?」
メイリンの言葉がどんどん突き刺さる。
「偽者のラクス様がどうなったか、議長が何をしているのか、何でッ・・・!」
ルナマリアは衝撃を受ける。無理矢理奥底へ追いやった懸念が、次々と心を荒らしていった。

「お姉ちゃんッ!」
呆然とした姉に迫り来る、三機の影。その三機こそ味方で在るが、このままでは姉がやられてしまう。
「・・・ッ!」
ギリギリのトコロで気付いた姉が、何とか攻撃をかわす。しかし三機の連携プレーは、姉に息を吐かせる間もなく、追い討ちをかける。
「ヒルダさん、殺してはいけません!」
止めてと叫ぼうとした矢先、ラクスが声をあげた。
「そのモビルスーツには、メイリンさんのお姉様がいらっしゃるのデス。」
「デスが、ラクス様!在れは敵デス!」
ヒルダの云う通り、幾等肉親とは云え、今は敵と云う位置に姉はいるのだ。
「いいえ。例え敵だとしても、決して撃ってはならないモノが在りましょう。」
ラクスの決然とした言葉。三機はその言葉を受け入れ、姉を牽制するだけの行動を取る。
「お姉ちゃん・・・。」
うっすらと安堵の涙が滲む。本当は自分の声を聴いてくれたらと思う。ケド、何よりもまず姉には生きていて欲しい。例え判りあえないとしても。

この時、いやメイリンが脱走したあの時から、ふたりのカタチは変わっていた。もう、今迄とは違うそらが、ふたりの上に広がっていた。
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