IBUSI FANTASY
〜親父旅立編〜


☆MEちゃん快気祝、たぬ様至極作品☆




砂漠の中にある唯一のオアシス。
そこは、交通と物資と情報と人が行き交うクロスロードとなる。



様々な人種・亜種が入り乱れ、各々に目当ての物を手に入れその身を癒す。
ここに、一人の少年が酒場の扉を開く音がする。

フードの付いたマントを深く被った小柄な少年は酒と料理と女と賭け事に熱中する男達の群をかいくぐるように抜ける。
時折、酔った男達の喧嘩に挟み込まれたり、酒を引っ被ったりしながらカウンターまで辿り着く。


「あ…あの」

「なんだ?坊主…ここは、ガキの来る所じゃねぇぞ?」

カウンターの中では白いシャツを腕まくりし、胸元まではだけさせた細身の男がグラスを磨いている。
じろりと睨むとフードの少年は少したじろいだ。

「あ…はい。僕…人を捜していて…ここ、冒険者の人達が集まるんですよね?」

「…坊主、ここは酒場だ。何だってここじゃ金がいる。…もちろん情報もな」

「あ…。そ、そうですよね…」

かといって、どうしたらよいのか逡巡する様子を見て、カウンターの男は溜息を吐く。

「…ちっ。…で、何にする?」

「……はい?」

「さっきもいったが…ここは酒場だ。その代金で俺が分かることは説明してやる。」

「…あ、ありがとうございます!…じゃあ、ミルクを」

「お前…、人の話聞いてたのか?」

不機嫌そうに眉間にシワを寄せたが、カウンターの男はもう一度溜息を吐くと黙ってミルクを出した。

「…坊主、名前は?」

棚に身を預けると、カウンターの男は煙草を咥えて、ジッポで火を付けた。

カチンと音がして、ゆっくりと煙がたゆたう。

「……あ、はい。僕は和です…えっと」

「暗石だ。…和?この辺りじゃ聞かねぇ名前だな」

「ずっと遠くから旅をしてきたんです。今日このオアシスに着いて…」

「なんでお前みたいな坊主がこんな砂漠くんだりまで旅してんだ?」

「あ…あの、僕…仲間になってくれる人を捜してて…ここに来たら冒険者の人達に会えるって聞きました」

「あー、まぁそうだけどよ…」

そう言って暗石は上から下まで和のことを検分する。

「…ま、そこらへんにいる野郎どもに声掛けてみたらいいんじゃねえか?」

暗石が指し示す視線の先には数人の屈強そうな男達が酒を飲んでいる。

「…わかりました!行って来ます!」

律儀に暗石に礼をすると、和はカウンターを離れた。








暗石が煙草を一本吸い終える間に、和はしょんぼりと肩を落として戻ってきた。

「……だめでした」

「…だろうな」

「僕みたいな非力そうな召還士、なかなか相手をしてもらえません」

和はややずり落ちた眼鏡の位置を直す。

「坊主、お前召還士なのか?…そうは見えねぇな」

「あ…はい、まだまだ新米ですけど」

「どれどれ…体力値35って、子供並じゃねえか。じゃあ無理だな」

「鍛えてはいるんですけど…なかなか体力つかないんですよ。…うわっ!?」

「おっと、悪ぃ…」

和の背後をすれ違った尾長族の少年がぶつかった。

「ちっ……坊主…」

暗石が舌打ちをしてカウンターに身を乗り出した瞬間、和の背後で声が上がる。

「っで!いたたたたたっ!ちょっと、タンマ!待ってって!」

「えっ!?」

和が振り返ると、先ほどの尾長族の少年がサムライ風の剣士に腕を捻り上げられていた。
尾長族は狼と人間との亜種で、ふさふさと揺れる大きなしっぽとぴんと立った耳が特徴である。
今やその自慢のしっぽは痛みでバサバサにけばだっている。

「ってーな!放せってば!いてーだろ!?」

涙目になりながらもじたばたと少年はもがいている。

「…そんなら先にあんたが盗ったもん返すべきなんじゃねーですか?」

彼を捻り上げている剣士は、静かながらも凄みのある声を出した。

「また、てめぇか椿!今度やったら登録抹消って言ったよなぁ…」

カウンターを乗り越えた暗石がゆっくりと近づいていく。
笑みの浮かんだ口元とは対照的に眉間には恐ろしいほどにシワが寄っている。

「や…おっさん。」

もがいていた少年は暗石の顔を見るとひきつった愛想笑いを浮かべる。

「…彼はここの登録者ですかぃ?」

「…あー、まあな。でもこれでもう『登録者だった』になるけどな」

「ちょっ…待ってくれよおっさん!そりゃねーだろ!?」

「ガタガタぬかすな。」

「……あ、あの〜、一体…どうしたんです、か?」

和がおずおずと近づいていく。

「……あんた、まだ気付いてないんですかぃ?」

一つ溜息を吐くと剣士はごそごそと椿の身体を探る。

「あっ…!何すんだよっ!?ば…ばかっ!どこ触ってんだ!?」

「…はい、お返ししますよ。大事なもんでしょう?」

そう言って和の財布を放り投げる。

「あ……れ?僕の財布…ありがとうございます」

「全く……椿、お前はいつもいつも…ちったあ腕が立つシーフ(盗賊)だからってそんなコソドロみてぇな真似しやがって。
今度俺の前でやったら登録抹消だと言ったはずだよな?」

「ちょ…勘弁してくれよ!そんなことされたら俺、依頼受けれなくなっちまうじゃねえか!」

「知らん。お前のまいた種だ」

「いーかげんに放せよ!財布は返しただろ!?」

椿は強引に腕をふりほどく。剣士も大人しく椿の腕を解放した。

「あのー…、暗石さん?何か勘違いしていませんか?」

「あん?何だ、坊主」

「…彼は僕が落とした財布を拾ってくれただけですよ?」

「…なんだと?」

暗石が片眉をあげて睨んでも和は微笑を崩さない。

「だから、彼は僕の恩人です。冒険者の登録を抹消なんて…されないですよね?」

そう言ってにっこりと微笑んでみせた。

「…はぁ。……ったく、だとよ椿」

「え?マジで?俺、お咎めなし?」

「はぁ。…あんた、底抜けのお人好しですねえ…」

剣士が呆れたように和を見て、苦笑した。

「あ…でも、僕のためにありがとうございました。僕…和っていいます」

「和さん…ですか。俺は、日織です」

日織は礼儀正しく、和に一礼した。

「よかったら…ご一緒してもいいですかね?」

そのまま流れで、日織、和、椿と並んで暗石のカウンターの前に座る。

「え…と、椿くん?よろしくね」

「おぅ、さっきはマジでサンキュな、和!すっげ助かったわ!」

椿はにかっと笑うと和の背中をバシバシと叩く。
耳と尻尾がパタパタと揺れている。よほど上機嫌らしい。

「…しかし、いいんですかぃ和さん?今からでも遅くはないですぜ…」

「何言ってんだよ!?和がいいっつってんだろ?」

椿がその尖った八重歯を剥く。

「いいんだよ、日織。その代わり…お願いがあるんだ」

「…お願い?」

「うん…僕の、仲間になって欲しい。」

「仲間?」

「…って和さん、あんた冒険者なんですかぃ?」

覗き込む2人に和はふるふると首を振る。

「ううん…。僕は冒険者じゃないんだけど…」

「…坊主、訳ありなんだな?ここじゃ何だ……こっちへ来い」

暗石がカウンターの奥にある赤いカーテンを引く。そこには地下へ続く階段があった。

「んだよ、おっさん。こんなとこあるなんて知らねーぞ!」

「…うるせぇな。特別な客しか入れねーんだよ」

耳に指をツッコミ、めんどくさそうに暗石が呟く。和、椿、日織が後に続いた。
地下室はゆったりとした広さで、息苦しさは全然ない。
シンプルな家具が置いてあり、暗石の煙草の香りが空間に染みついている。

「俺の部屋だ」

暗石は和達に椅子を勧めると、氷と酒を用意した。

「げっ…!コレマジで良い酒じゃねーか。こんなの店で見たことねーぞ!」

「これは、俺のだ」

「旦那も好きですねぇ」

「美味い酒を知らんってことは、人生の喜びの半分を知らんってことだな」

そう言って満足そうにグラスを鳴らしている。
日織は強そうな酒をぐいと飲み、けろりとしている。椿はちびりちびりと舐めていた。

「…で、坊主。お前…一体何なんだ?さっきから…どうもお前からはおかしな匂いがする」

暗石は和を見つめながら、煙草へ火を点けた。

「え…と、あの」

和はしばらく視線を巡らせていたが、意を決したようにフードを肩へ落とした。
ぱさりと落とされた後には、黒髪の間から伸びる長く尖った耳がのぞいていた。

「和さん…?あんた…それ」

「え……エルフ、かよ?うっわ、マジで!?」

「噂には聞いていたが…本当に居たとはな」

暗石は驚きのあまり、灰が落ちたことにも気が付かない。
3人とも食い入るように和の耳を見つめている。
和は少し照れたように時折ぱたっぱたっと耳を動かしている。
今はほんのりピンク色に染まっていた。

「あ…あの、隠していてすみません。でも…みだりに出しちゃいけないってじいちゃんが…」

和は俯いたまま一気にまくし立てる。

「じ…じいちゃん…が…ふっ…っく…うぇっ…は、早く…仲間を…見つけないと…」

嗚咽と共に言葉を吐き出す。ぎゅっと固く握った拳が、膝の上で震えている。

「早く…じいちゃんを…助けに…行かないと…うっく…!ふぇ…っ!」

日織がそっと和の眼鏡を外すと、懐から出したハンカチでその涙を拭う。

「和さん…落ち着いてくだせぇ。俺達でよければ、力になりますから…」

その言葉に徐々に落ち着きを取り戻した和は、事のあらましを伝えた。













「…つまりは、坊主。お前の暮らしていたエルフの谷にダークエルフが攻め込んできたってわけか」

いつの間にか煙草を吸うことをやめて耳を傾けていた暗石がぽつりとこぼした。

「…はい」

「そんで、和を逃がしてくれたじーちゃんが仲間を作れって言ったんだよな?つーかさ、和は召還士なんだろ?
だったら自分達でいろいろ召還して闘えばいいじゃねーか」

「…うん」

「エルフの召還士は一般の召還士とは違うんですかい?」

「僕達自身には闘う力はほとんどないんだ…。ただ、仲間となってくれる人と契約を交わして…それで、その人の潜在能力を最大限まで召還する。」

「…それで、腕の立つ冒険者を探していたってわけか」

「潜在能力を最大限までって、どのくらいなんだ?」

「う〜ん……。武術流派の師範クラスの達人でも、自分で引き出せているのはよくても潜在能力の20%くらいまでかな…」

「ってーことは、和さんと契約したら…最大限ってことは」

「ほぼ100%だね」

「…んなことして、身体の方は大丈夫なのか?」

暗石が眉根を寄せる。

「命に別状はありません。……ただ、しばらくは動けなくなると思います」

「…それで、なるべく沢山仲間がいるってわけですね」

「ふ〜ん…。和のいたエルフの里ってさ。珍しいお宝とかあったりするの?」

「そりゃそーでしょう。大体エルフなんて伝説の存在と思われてる位なんですから」

「よし!じゃー俺行く!」

「…てめーは、またやらかすつもりか」

「なんだよ、おっさん。これは人助けなんだぜ?」

「え……?いいの、椿くん?」

和の瞳に希望が灯る。

「俺も行きますぜ…和さん」

「ちっ…俺も行くぜ。久々に若いときの感覚が戻って来やがった」

「旦那も元々は冒険者でしたからね」

「…今も現役だ、馬鹿野郎」

暗石はベルトの後ろに挟んでいた銃を、一瞬で日織のこめかみへと当てる。
あまりの早さに日織はまばたきすらできなかった。

「…前言撤回します」

苦笑した日織は両腕を上げる。それを見た暗石は満足げに銃口を下ろした。

「…みんな、ありがとう」

和は涙ぐんで深々と3人に頭を下げた。










「…で、契約を交わすって具体的にどうするんだ?」

暗石がカウンターで銃の手入れをしている。日織と椿は旅に必要な武器や防具、食料や薬草などを調達に出かけている。

暗石はしばらく店を閉めることを表に貼り出し、店には暗石と和の2人だけだ。

「あ……えっと……その」

和は突然俯いてごにょごにょと呟き始める。

「なんだ?はっきり言え」

「あ……だから、その………ス、…することです」

「あん?」

苛ついた暗石が強引に和の頭を掴んで上を向かせる。

「だからっ!…キスすることです!」

和の顔は真っ赤だった。

「………なんだと?」

暗石は思わず動きを止めた。

「…だから、その…契約を交わす者との間に…身体的接触があればあるほどいいんですけど…
その、そこまでしなくても…キ…キスで充分潜在能力は引き出せます」

和の顔がどんどん赤くなっていく。

「……マジか」

つられて珍しく暗石の顔にも朱が差す。和はこくんと頷いた。

「しかも…契約を交わしてから日が長いほど、効力は強まっていくので…」

「早けりゃ早いほどいい…ってわけか」

暗石はがしがしと頭を掻く。和はその態度にビクッと肩を震わせた。

「……ったく。ビビってんじゃねーよ」

そっと和の頭に手を乗せると優しく髪を撫でた。

「…あいつらが帰ってくる前に……済ませちまうか?」

そのまま手を顎の下まで滑らせて、くいっと和の顔を上げさせる。

「え……?あ、あの……」

カウンター越しに暗石の顔が近づいてくる。和は身動きがとれない。

「………………あれ?」

ぎゅっと目をつぶっていても一向に暗石が訪れないので、和はゆっくりと目を開ける。
暗石は顎の無精ひげを撫でながら考えていた。

「………よし。坊主、来い」

和の手を掴むと、地下の自室へと降りていく。

「えっ…?あの…暗石、さん?」

和は暗石に引かれるままに連れて行かれた先は、暗石の寝室だった。













「…えっと、暗石…さん?」

今朝暗石が起きたままになっているシーツの跡の生々しさに、和が目のやり場に困っていると、
暗石が羽織っていたシャツを脱ぎ捨てた。

「……何だ?」

「あ…あの…」

ゆっくりと暗石が和に近づいてくる。その身体は細身ながらも若い頃の冒険の証が数多く刻まれている。
しなやかな筋肉は余分なものがなく、思わず触れてみたい衝動に駆られる。

和は暗石を正視することができずに目を逸らす。

「ななな…何してるんですか!?」

せわしなく動く和の耳に冷たい唇が後ろから寄せられる。

「何…って、決まってんだろ?」

そっと囁かれる感覚に和の身体がぞくり、と痺れる。

「あ……の…」

ゆったりと後ろから腰に手を回される。決してきつくないその拘束を和は振り払うことができない。

「折角なら…キスといわずに…、いろいろしとくか」

ゆっくりと服の内側へ忍び込む指に和の意識は絡めとられていく。

「あ…………」

尖った耳の先端に口付けられる。冷たい唇のはずなのに、触れられたところが熱くなる。
徐々に首筋に顔を埋められ、深く息を吸われる。
その感覚にすら敏感に身体が反応してしまう。

「んあ……!」

細く、節の立った指が後ろから回り込んで和の唇の中へ忍ばされる。

「ん……んんっ…ふぁ…あ…っふ…!」

口の中を愛撫されるうちに暗石は肩口へ吸い付く。

「ひあっ……!?」

その強烈な感覚に和は仰け反った。膝が、かくんと折れる。

「おっと……」

崩れ落ちる所を暗石が後ろから抱き留めた。

「危ねぇな…。坊主、こっち来い」







暗石は和を自分のベッドへ寝かせる。
そこには、暗石の匂いと煙草の匂いが混ざり合っていて和は急に恥ずかしくなる。

「あ…あの…僕…」

身を起こそうとするが、思うように力が入らない。

「いいから。お前は力、抜いてろ」

和の上に暗石が覆い被さってくる。
ぎしり、とベッドが軋んで沈み込む。
自分の上から見下ろすその瞳は艶っぽくて熱が籠もっている。薄く笑んだ唇。
筋張った細い首。浮き出た鎖骨。張っている肩胛骨。細い腰。

その全てが淫猥で、和の鼓動を速くする。

そっと頬に手を添えられるとぴくり、と身体が跳ねる。

「………初めてか?」

そっと熱を溶かしたように囁かれる言葉に和はゆっくりと頷く。


「目……閉じてろ」


ゆっくりと暗石の瞳が近づいてくる。

和はその言葉に従って目を閉じた。


「んっ………」


柔らかくその唇が塞がれる。軽く2度3度と口付けされるうちにゆっくりと身体の緊張がほどけていく。
多少ヒゲがざらつくことはあっても、その甘さに和は酔い腕を暗石の首へおずおずと回す。
暗石は和の髪を梳き、和の首の後ろへ手を回す。その感触に和はほう…と溜息を漏らす。

徐々に口付けは深さを増し、熱い舌に唇をなぞられた時思わず声が出た。

「んあっ…!?」

その瞬間を逃がさず、そのまま舌が滑り込んでくる。いつも暗石が吸う煙草の苦さが和の舌を刺激する。

「ん…んっ…あ……んんっ」

暗石の舌に絡めとられて息が出来ない。身体と一緒に頭の中まで熱に浮かされていく。
せわしなく暗石の胸元をまさぐる手を不意に掴まれ、指を絡められた。
そのままベッドに押さえつけられ、固く握った。



「んあっ…!!はぁ……はぁ…」


ようやく唇を解放されると激しく酸素を求めて吸った。
唇の端に冷たい感触。初めて自分が唾液を零していたことを知る。
急に恥ずかしくなって拳で拭った。

暗石は目だけで笑うと和の服の下、薄い腹へ手を滑らせた。

「あっ……!」

初めての人に触れられる感覚に和の身体が仰け反る。

「やっぱり…エルフってのは極上の肌していやがる…」

そのままたくし上げると、和の肌に吸い付いた。

「ああっ…!!んっ…くら…し、さん…!」

和がその頭を掻き抱く。
暗石が慣れた手つきで着衣を脱がせるのを、腰を浮かせて手伝った。

「や……恥ずか…しい…です」

足を擦りつけて身を隠す。

「なんだ…エルフの里じゃ、こーゆーのは教えてもらわなかったのか?」

強引に暗石が和の足を開くと、和は己の変化を目の当たりにする。

「あ………や、僕……変だ」

「何、言ってやがる。こんなもん当たり前だ」

きゅ、と握り込まれて初めての快感に力が抜ける。

「あ……や…そんな…とこ…」

「そうか?お前のここは…そうは言ってないみたいだがな」

徐々に暗石が緩急をつけて動き出す。

「や…!?な…何、これ……!ん……はぁっ…!」

次第に和も暗石に合わせて動き出す。

「あっ…!!や…っ…!なん…か、変っ…!あつ…いっのが…!」

「……いいぞ、和?」

耳元で熱く囁かれる。吹き込まれるような感覚に和の熱が弾けた。

「あああああああっ」











和は放心したまま暗石に身を預けている。

「…大丈夫か?坊主」

暗石がその瞼に唇を落とす。ぼんやりと和は頷いた。

「このまま最後まで…と思っていたが、どうやら時間切れだな」

「………?」

朦朧とした頭で、言われた言葉の意味が掴めない。

「あいつら戻って来やがった。お前はゆっくり、ここの奥で湯でも浴びてから来い」

そう言って奥のバスルームへ行くと和の為に湯を張る気配がした。
一通り必要なものを揃えて、暗石は階段を上っていった。
しかし和は、先ほどまでの熱っぽい暗石の視線や指先を思い出してはなかなかベッドから起き上がることが出来なかった。












砂漠をゆっくりと進む旅用のフタクビアシカの影が4つ。
砂漠を滑るようにゆっくりと泳いでいる。この辺ではフタクビアシカより早い移動手段はない。




「……和さん、どうかしたんですかぃ?」

「え!?なっなななななっ何が!?」

「………絶対、おっさんと何かあったろ?」

「ええええええええ?な…何って……何!?」

「知るかよっ!?てゆーか、こっちが聞いてんだよ!」

「…だめだ。和さんに聞いても埒があかねぇ…ねえ、旦那?」

「あん?薄気味悪っりぃ面してんじゃねーぞ」

「おや、いきなりですねぇ。何か心にやましいことでもあるんじゃないですか?」

「ふん。」

「そーいやさー、和。契約を交わすってどーすんだ?」

「えっ!?けけけけけ契約!?」

「ほほーぅ………」

「…何だ、日織…その笑顔は。目が…据わってんぞ?」

「ねぇ、旦那。ちょっとあっちまで面かしてくだせぇ」

「知らん」

「あ?日織?こんな砂漠であっちって…おい、お前らどこ行くんだよ!?…放っとくか。
なー、和?早く俺とも契約交わしてくれよ!俺の盗みテクを100%まで引き出してみてーんだよ」

「そっ…そんな!100%までって…、僕どうなっちゃうの!?」

「俺が知るかっ!…なー、和ってばー!?」

「100%…!?そんな…あれ以上もっと…!?…ええええええ!?」








それぞれの思いを余所に、エルフの里へ向けて4頭のアシカはゆっくりゆっくりと砂漠を進んでいった……。






【完?】






『Wheel of Fortune』のたぬ様より、MEちゃん快気祝いとして頂戴致しました〜っ!!
有り難うございます!!!
何が素敵かって、酒場の暗石さんが素敵なんですよおっ!!
めちゃくちゃ合うジョブですよ?しかも銃使いですよおおっ!?(鼻血)
ナンダコレッ!ときめくじゃないかんもおおおおおおっツ!!(もううっさい/笑)
こっそり、続編を作成してらっしゃるとの情報をゲッツしました。(ニヤニヤ)
いつまでもお待ちしますので、ゼヒゼヒ続きがみたいです!!

たぬ様、こんな萌要素たんまりつまった素敵作品を頂きまして、誠に有り難う御座いました☆

『Wheel of Fortune』様には、素敵な雨格子キャラ達がこれでもかっ!ってぐらい活躍しております♪
ていうか、遊びにいく際は、ティッシュを持っていきましょう(笑)

題名に問題アリなのは自分が命名したからでありましてコレ・・・(汗)
ほんっとこんな素晴らしい作品に、アホな題名を付けてしまい申し訳ないです・・・
快く了承くださったたぬさん!ほんっとありがとです!


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