A

雨よ降れ。
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梅雨入りが待ち遠しのは僕だけ?






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中学二年の梅雨入り。

梅雨入りしたのに、傘を忘れる程間抜けじゃない。



でも、それが傘立てに無かった事は
誰かが自分のじゃないこと承知で持っていったか(だって、傘立てには傘一本もなかったもん)、
秀才村田健を妬んでの悪戯かの二択。



ざざぶりで水溜まりどころじゃないグランドを席からボンヤリ見ていた。



(どうしようかな………)



別に傘が無いことにも、悪戯されたか分からない事にも、めげている訳じゃない。


どうやって帰るか、それが悩み。


タクシーを呼んでも良いし、雨が止むまで待ってもいい。



それも二択で済むんだから対して重要じゃない。



ここで選択肢に無いのは友人に傘を借りるって事だ。



別に拗ねてるわけじゃない、対して困ってない事位で他人に力を借りるのが面倒なだけ。




空を見上げれば雲は黒く、止みそうにない。




(タクシー決定。)



そう決断すれば早かった。
僕はカバンから携帯を取り出して、ボタンを押そうとしたとき……




「あれ?? 村田??」



静かだった、一人だった教室にもう一つの影が伸びた。



「………渋谷」



━━━━━━渋谷 有利。





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