殺ノ章

□Novel\シドウ
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バン




破裂音。




繰り返し7回鳴るとやがて音が止んだ。
と思えば数秒後に再び破裂音。





銃声。








コンクリートで固められた広い空間でただ黙々と動く的に弾が撃ちつけられていた。






バン、と最後の銃声が鳴り終わると動いていた的たちがぎこちない音をたてて止まった。





「───トータルは」

「命中率10、速度10、反応9.5、貫通率9.5です」

後ろのスピーカーからモルゴの返答が返って来た。




銀色に光るリボルバーを置いて、目元を覆っていた布を取った。







「──上々だ。」










数ヶ月振りにしてはな、と彼は付け足して、嗤った。





















+ + +

射撃場。



一番気に入っているリボルバーに新しい9mmを詰めて、今度は目隠しなしで標的を定める。

作り物の的が機械によってあちらこちらへと素早く移動している。

マスターは動じずに、連続で引き金を引いた。

集中に当てられ、的の顔が砕ける。


銃声が空間に響いている間にリロードを開始して、再び新しい9mmを詰め込む。


そして、響き終わる前にまた新しい銃声が鳴り注いだ。





小一時間、ずっとその繰り返し。


「ふぁ‥」

「お暇ですか?」

「いや、よっく飽きないなぁ…って」


強化硝子一枚挟んで、彼の細い背中を眠気含んだ瞳でシグンは見つめていた。

マスターがいる空間は射撃場で、飾り気がないコンクリートの壁だらけ。
彼の前には不規則に動く的がうようよとうろついている。

マスターの足元には、かなりの数の使用済みの銃弾が散乱していた。





彼の後ろは硝子一枚挟んでいるだけで随分と雰囲気が異なる。

狭い部屋でマイクの音量調整器具や的の管理システムなど機械で溢れていた。



シグンは脚立椅子を真逆に座って爪を甘噛みしていた。
モルゴは、ただ黙って彼の背中を見つめている。










「マスター、最後の的です」

「任せろ。」

と、リロードが終わったのは同時。



距離15M、標的の大きさ30CM

それは、5秒も行かずに粉砕された。









「終わり?」

シグンが顔を上げる。


「えぇ、的を補助しなければ」

「やっと終わったか…」


暇だった体からようやく開放されるかと思うと甘噛みしていた指が治まった。






自動ドアが開き、マスターが御機嫌な様子で戻って来た。


「すっきりした。」

「そりゃあ150体を延々と撃ちまくりゃぁ…」
「何だ」

「イイエ…」






彼は、シグンが予想していたより完治が早かった。


全治6ヵ月。





だったのにマスターの傷は4週で完全に治った。

痛み止めも何も飲まずに安静にしていただけで。


翠華が怪しみ、嫌がる彼を無視して無理矢理衣服をはぎ取り傷口を確認すると、うっすらと傷跡が見えるだけで、全てが収まっていた。



「おかしいって絶対、」


深い溜め息を零してシグンは頭を抱えた。



「…(何言ってんだコイツ…)」

「以前とほぼ、能力の衰えは見えません」

「当たり前だ。今日から再開するぞ」

「はい。」


「やけに気合いが入ってんね…」


「当たり前だ。この俺に小賢しい真似仕込んだ上に顔も見せない腰抜けの面が見たくなった。」




「ま、マスターさん後ろからなんか見える…」


龍か虎辺り。





「何処の誰だか知らねーが会ったら取り敢えずこのリボルバーで右腿のふくらはぎ上2cm打ち抜いてやる」


「(怖ッ!)」















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