other

□Rain Rain
2ページ/4ページ

しとしとと、大粒の雨が降る中
フォルは困っていた。

今朝はあんなに晴れていたのに。
いつも見ている天気予報だって、一言も「雨が降る」なんて言ってなかったのに。


「……はぁ」


深く長い溜息をつく。
今日の朝、じっと天気予報を見つめていた自分に向かって


『そんなの、当たらないよ』


それはそれは面白くなさそうな顔で呟くオセロを思い出した。
本人としてはヤキモチのつもりで言ったのだろうが、
まさかこんな形でその嫉妬の執念深さを思い知らされるとは。


(まるで)

(“自分の方が役に立つ”、)

(なんて顔)


だったら迎えに来ればいいのに―‥


「…!」


その一瞬浮かんだ考えにフォルは驚き、降り払うように首を振る
思っていた以上に、オセロを頼っている自分を自覚してしまい恥ずかしくなった。
オセロが自分を慕っていてくれていることも、大切にしてくれていることも知っている。
(知っているというか、あの態度を見ればどんな鈍感でも気付くだろう)
無条件に自分を甘やかしてくれるオセロの気持ちは純粋に嬉しい。
嬉しいのだが。


(そんな都合のいい話が)
(あるわけない)


何よりフォルの山よりも高く岩より硬いプライドが、それを許さないのだ。
濡れて帰ればオセロは怒るだろうが、こちらとしては早く帰りたい。
すぐに風呂に入れば問題ないだろう。


「‥‥帰るか。」


少し小降りになってきた雨に安心しつつ、外へと一歩足を踏み出した
その時、





「ツン!」






ばしゃばしゃと水溜まりを蹴って
走ってくる、黒い犬。


「オ、セロ…!?」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ