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□Rain Rain
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「へへ、ツンが心配で来ちゃった」


へらり、
目を見開いて驚くフォルをよそに、オセロは照れ臭そうに笑った。
閉じたままの傘が目の前に差し出される。


「ほらね、

 俺のほうが役に立った」


あぁ、やっぱり妬いていたのか。
マフラーを首に巻かれながら、フォルは手渡された傘を眺めた。
よく気が利く目の前の犬は、尻尾を振りながら誉めてほしそうな顔をする。


「………フン」


本当はオセロを誉めて、ありがとうと言いたいのだけれど。
ついて出たのは生意気な鼻鳴らしだけだった。

それなのに、フォルの素直になれない性格を見通しているのか、
オセロはまた嬉しそうに頬を緩めた。


「じゃ、帰ろっか‥‥ツン?」


フォルの手を引き、歩きだそうとした時
じっとその手を見つめる様子が目に入り、オセロは不思議そうに首を傾げた。
眉間に皺を寄せ、何かを考えていたフォルは不意に口を開く。


「…傘」

「へ?」

「傘は、ひとつでいいだろう」


一言だけ言えば、フォルは繋がれた手を握り返しオセロの傘へと入る。
…これは、
所謂、
アレなわけで。


「つ…ツン?」

「なんだ」

「ぁ、相合傘、だけど?」

「そうだな」

「いいい嫌じゃないのっ?」

「それより、マフラーが濡れないかが心配だ。二人で使うと傘の間から雨が掛かるから‥

…お前は僕と相合傘は嫌なのか?」


ぱちくりと目を瞬かせたオセロの問い掛けには淡々と答え、
逆に意地悪な質問を返してやる。


(嫌なわけ無いんだ、オセロは)


案の定、オセロはぶんぶんと首を横に振る。
その事に微かな安心感を覚え、フォルは息をついた(他人が見たら溜息に見えたかもしれない)。


「…なら、帰ろう」


今度は、自分がその手を引いて。
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