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□U短文集
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小さな頃から暗闇は嫌いだった

マフィアなんて闇そのものな職業の癖に。

いつも逃げ出したいと

居場所を求めて彷徨うように

うろついてた気がする。



(…俺もね、淋しいんだ。キレネンコ)

(お前が早くこっちにくれば)

(二人ともさみしくないよ)









おいで。














「    !」


ばっと目を見開いた。

ふいに顔面に重みを感じる。
あぁそういえば
雑誌を読んだまま眠ったんだっけ。

そのまま起き上がれば、愛読書がバサリと音をたててシートに落ちた。
外は暗い。車は道路脇に停められ、レニングラードもオカマも助手席で眠ってる。
運転席ではブタ箱で同室だった奴がシートを若干倒して鼾をかいていた。
(誰の許可なく倒してやがる)(若干俺の足が挟まってるだろうが)
名前は何だった?
…プーチン。


「……ッチ」


少し荒々しく扉を閉めた。

夜の冷えた空気が鼻を刺激する。
伸びをしてついでに夜空を見上げてみる。綺麗な星が点々と散らばっていた。


「…上はあんなに綺麗なのにな」


地上は、辺りは見渡しても真っ暗だ。

道路脇の林の奥なんて続く道が見えない。
まるで
闇に呑まれたみたいに

真っ暗。


「……お前はどっちに居るんだ?」


星と、辺りを見比べて小さく問い掛ける。

死んだかどうかもわからない片割れを探す。
あんな夢を見た後だからか?
意味もなくその懐かしい姿が
見えるような気がした


(…なら、お前はどこに居たい?)

「……」

(星と闇、寂しくないのは)

(どっちだろう?)


どっちでもいいさ。
お前がいるなら。


(ねぇ、キレネンコ)


いっしょにいこう

















「どこにいくの」






車から手首を掴んだのはプーチン。
何時の間に起きていたのか、目をぱっちり開けて不思議そうに俺を見上げた。


「どこにいくの」


もう一度同じ事を尋ねられる。
尋ねるというよりは、咎めるような物言い。

きにいらない。


「…便所」

「本当?」

「嘘ついてどうする」


痛い、と文句を言えばいとも簡単に手首が解けた。
嘘をついたのに、善良な一般市民は安堵の息を洩らした。


「そっか。ならいいんだ」


にこりと笑いながら車から降りてくる。
俺がしたのと同じように伸びをした。


「…眠らないのか」

「ぁはは、目が覚めちゃって。それにキレネンコが用をたしに行くなら戻ってくるまで待とうかなー、と。」


辺りは暗いから、大人でも迷子になっちゃうよ

…それは
俺への警告?


「…馬鹿にすんな、クソガキ」

「ぁ!馬鹿にしたわけじゃないよっ?ただ、」



「いやなんだ。ひとりになるのが。

 暗やみは恐いからね」



ビックリだ。
あまりにもタイミングがいいから。


「………、」

「心細いから、早く戻ってきてね」


まってるよ。











暗やみの中で深く呼吸をした。

早く帰らなければ。約束を守るために


(行くんだね)


ごめんなまだお前の傍には逝けないや
例え暗やみでも星の中でも
あいつも暗やみが恐いと言ったから
お前とおれと同じだから

それに

お前はそこには居ないから


「…ばいばい」





さみしかったらまたあいにきて。







【俺は此処に居るよ】











2008.12.24
突発で文なんて考えるもんじゃない。
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