小説

□call
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瞼の裏が、やけに明るい。
何かが。
轟轟と、唸りを上げている。

ああ。
また、あの夢だ。

狂ったように哄笑する、男の声。
轟轟という唸りに雑じって、爆ぜるような、音。

その音に掻き消されるように、微かに聞こえる女の声。

燃えている。
あれは。

あの女を閉じ込めた社が、炎に包まれている。

微かに、でも明瞭と自分の身を案じた叫び声が聞こえる。
助けを求める声ではなく。
あの優しい女は、炎の中にいてもなお、己のことよりも、この自分の身を案じてくれていると云うのに。

なのに、身体が、動かない。
背中の右側が。
痛い.。
あまりにも痛くて、それが痛みなのかどうかさえ、判らなくなるくらいに。
どくどくと。
やけに拍動とシンクロしていて、気持悪い。
何かが、流れ出すような。


どうしても。
どうしても、あの女を助けなきゃ。
――と、約束したのに。
大好きなあの女を。
2人で守ろう、と。
――と一緒に、約束したのに。

ああそれなのにカラダが動かない痛いいたい苦しいゴメンなさいおねえちゃんどうしても届かないんだゴメンじゅん約束したのに守れなくてゴメン約束守れないのは悪い事だっておにいちゃんが云ってたゴメンなさいでもどうしても助けたいんだ助けなきゃそれなのに何で動けないんだ痛い痛いよおにいちゃん助けてあのひとを助けるためなら何でもするからどうかあのひとをおねえちゃんを助けて

炎が、勢いを増した。
閉じた瞼の裏が、一段と赤くなった。
  
やがて、何もかもが、遠くなってゆく。
目の前が暗くなってゆく……。
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