拍手御礼SSS
□シンカガ
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「これは‘もし’の話だけどさ、」
そんな日常的な話の切り出し。
手を繋ぎながら、オーブの海岸を散歩していたときだった。
別に、その話にカガリの承諾を取るなどということはする必要はなかったので、シンはそのまま続ける。
「カガリがザフトだったら・・・とか考えると面白くない?」
「私はナチュラルだぞ?」
「カガリなら、そこらへんのザフトの一般兵より強いから大丈夫だよ。」
「一応、お世辞として受け取っていくよ。」
それでも、カガリはその言葉ついでにデコピンを送ってきた。
シンがそんなもしも話を考える理由なんてたくさんあった。
たとえば、ルナマリアのような制服を着ているカガリを見たいとか。
たとえば、恨まずにすんだとか。
たとえば・・・
「カガリがザフトでも、俺は恋していたかな?」
「む・・・疑問系なのが気に入らない。」
「はは・・・ごめんごめん。」
何気ない問いだったはずなのだが、当の彼女はかなりのご立腹のようだ。
それが、嬉しかったりというのは内緒だが。
「別に私がザフトでも・・・私はシンに恋してた。」
「え、あ、あの・・・」
「豆鉄砲を食らった顔、してる。」
「う・・・」
横の彼女はその表情が笑いのツボだったらしいが、シンにとってはそれほどの言葉だったのだ。
素直に好きといわれるくらい間接的でも直接的。
「シン?恋っていうのは本能的じゃないか?」
本能的。
その言葉に妙に納得してしまう。
つまり、
俺たちが何者であっても、恋していたと━━
end
一目ぼれとか、片思いとか、本当の想いって本能的で背くことなんてできないとか思う。