インベンション。

□蝶よ花よ
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イェーイ!と一人で盛り上がり、はしゃいでいるアカネ。
その傍らでパチパチと拍手しつつリプレが微笑み、俺の隣には侍男が佇む。
…片手に釣竿を携えて。
そして俺の片手にも釣竿。

“後悔先に立たず”って言葉は今の状況を指すに違いない。
アカネに頼んだ事を、俺は地の底よりも深く後悔した。
アカネが倉庫からライの釣竿を抱えて出てきた後、ここ――水道橋公園に辿りついた時からな。

「……………………………………アカネ」

「まぁまぁ、そう怖い顔しないの!
これならシンゲンと闘えるし、晩御飯のオカズも採れるじゃない?うーん!我ながら一石二鳥な良い案!」

「これはなぁ!アルバの将来を決める決闘だぞッ?!」

「何いってんの!食糧を確保出来るかどうかは重要でしょーがッ!
食を得る者は貧乏を制するんだから!!」

「そうね。魚一匹釣れない人だったら、アルバを預けるのは少し不安だわ」

アカネに珍しく正論をかざされて。
リプレから母親らしい言葉を聞かされて。

挙げ句に。

「対決は水に流れても構いませんが、釣った魚が今晩のオカズになるのでしたら頑張らないといけませんねぇ。魚好きなアルバくんの為にも──」

こんな事を侍男が吐かしたら、どんなに不本意であっても釣りで対決するしかない。
仮にもし、ここで決闘が流れたとしたら。


『アルバくん、魚は美味しいですか?』

『ハイ!とても美味しいです!』

『それは良かった。アルバくんの為に釣ってきた甲斐があります』

『シンゲンさん…』

…という、今晩拝むであろう光景が頭の中に浮かぶ。
いかがわしい目つきでアルバを愛でる想像の中の侍も腹立たしいが、そんな想像が容易く出来る自分も、無性に腹立たしい。
とにもかくにも、断固として阻止してやらねば。


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