インベンション。

□蝶よ花よ
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「侍男!その刀で俺と闘え!」

「シンゲン!無視無視!闘わなくていいから!!」

「……」

俺とアカネの言葉が聞こえていないのか、侍男は刀を手に持っているが鞘から抜こうとはしない。
渡された刀を一心に見つめて、何か違うことを考えている様だった。
奴の空気から、その内容が深刻なことなのだと悟れる。

――が、今は気遣いなど無用だ。
ヤツがアルバに本気で惚れているなら、この勝負から逃げはしない。
逃げたのなら、そこまでの男だったって事だろう。

さて、どう攻めようか。
真正面から討ちあっても俺にまず勝ち目はない。
刃渡りはヤツの方が断然に長いし、武器の重量でも俺は劣る。ただし技術面は五分ってところだ。
そうなると、身体能力と素早さを上手く活かすしか勝つ手立てがないだろう。

「来る気がねぇなら――こっちから行くぜ」

二、三度その場で足踏みをしてから勢いよく地面を蹴りあげ、体勢を低く構えたまま一気に間合いを詰める。
その流れで右脚を使って体を捻り、侍男の左側へと回りこんだ。
そして、ヤツの脇腹目掛けて苦無を振る。

結果は、予想通りだった。



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