インベンション。
□午後にパレード
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それは唐突に。
「アルバくん」
名を呼ばれたのでそちらへ振り返ると、宿の軒下でシンゲンさんが手招きをしていた。
これは珍しい。
何か用のある時は大抵、彼の方から寄って来るというのに。自分を呼ぶなんて一体どんな用事なんだろうか、とすごく興味がひかれる。
ただ、シンゲンさんが満開の笑顔を浮かべている処が何となく引っ掛かった。
この人は常に笑っているけど、今日の笑い方は何か可笑しいのだ。
これは根拠のない推測だが──シンゲンさんは何か企んでいると思う。それも自分に知られたらマズイような類の事を。
非常に怪しい。そう感じた。
けれど、ここで無視するのは失礼かな、とも思う。もしかしたら自分の思い過ごしかもしれないし。
一瞬だけどうしようか迷ったが、危機感よりも良心の方が勝ったので彼の佇んでいるすぐ側まで近寄った。
……この時、少しは警戒しておけば良かったと自分は後で後悔する。