インベンション。

□君を匿った日
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丁度、午後二時を過ぎた頃。

慌ただしく扉を叩く音がシンゲンの部屋中に鳴り響いた。
戸を開けるとそこには若い娘が三人。その一人は何故か小脇にミントの護衛獣であるオヤカタを抱えている。

「どうしたんですか?」

「シンゲンさん。つかぬ事を伺いますが、此方にアルバさんがおいでになりましたか?」

「いいえ、来てませんが」

「そっか……もしかして外に逃げたのかしら…」

「そーかもねぇ」

何やらボソボソと話し合うと、三人娘は部屋から嵐の様に去っていく。
彼女達が見えなくなるのを確認した後にシンゲンは部屋にある洋服箪笥へと──正しくは、箪笥の中にいる人物へと話し掛けた。

「……もう大丈夫ですよ」

ガタ、と微かに物音をさせて箪笥の戸が開く。
中から出てきたのは三人娘が探していた人物──アルバであった。




彼女達が訪れる数十秒前、自室で調弦していたシンゲンの元へアルバが大層慌てた様子で駆け込んできた。
そして彼は瞳に涙一杯溜めて、こう言ったのだ。
『お願いしますッ、匿って下さい…!』
と。
事情が只事ではなさそうなので何も聞かず、シンゲンは彼を匿って。
後は冒頭へ戻る、という訳だ。





箪笥から出たアルバはベッドへと腰掛けた。
部屋に一脚しかない椅子はこの部屋の主であるシンゲンが使っている為である。


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