インベンション。

□味覚消失
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いつもの如くライにご飯を頂きに食堂へきたシンゲンは目にした。
何を、というと──同じテーブルに向かい合って座るセイロンとアルバを。

その珍しい組み合わせは何とも明るく微笑みあって、楽しそうに談笑している。
シンゲンのいる場所からは会話の内容など分からない。

だが、二人から仲好さげな雰囲気はヒシヒシと伝わってきている。
何か邪魔出来ない空気も感じていた。

シンゲンとしては、アルバと今日顔を合わせたは今が初めてだから一言くらい声を掛けたい。
でもあの空気に割って入るのは腰がひける。
無いとは思う。絶対に無いと思うが──もし、鬱陶しそうな表情をされたら……そう思うと怖くて近付けない。
だがしかし声を掛けたい。


食堂の入り口で色々と思案した後。
結局、シンゲンは二人から離れたテーブルに座った。

そして見計らった様に、彼の元へ白米と味噌汁の入ったお椀をアカネが運んでくる。
彼女はシンゲンの顔を見るなり声をあげて笑いだした。

「…どうして笑うんですか」

「だってシンゲンってば、すっごく機嫌が悪そうでさぁ…!あーもー、分かりやすっ!!」

そのまま大笑いしつづけて数分。
アカネは「まぁ、頑張って!」と言い、力強くシンゲンの背中をバシバシ叩くと、笑いながら台所へと消えてゆく。
さも愉快そうに。


(無責任だ。……何が『頑張って』、ですか)


胸に沸き上がるこのモヤモヤを振り払うには食事に没頭するしかない。

そんな風にシンゲンは苛立ちと空腹をこじつけて白米をかきこみ、味噌汁は流し込むように飲みほす。


その日の料理の味は、全くの無味だった。



End






嫉妬侍。
怒ってるとどんな料理も美味しくない……と思います。

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