インベンション。

□幸福が為の
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今宵、私と貴方は肌を重ねる。


それは私の意思だけに従った形で。
貴方に拒否する権利は与えられない。

その代わりに行為の間、貴方は何一つ考えなくて良いのです。何もしなくて良いのです。
貴方はただ黙っていれば良いのです。

人の形をした物の様に無反応でいて。
時折だけ私から与えられる感覚に酔い溺れ、そうして朝には今まであった事を忘れてしまえば宜しい。

重なった肌の柔らかさ、口から出た吐息の熱さ、律動的な快楽の激しさ。
それらの感覚だけを覚えていれば宜しいのです。

善良な思考は捨てなさい。
そう、唯。
黙っていれば良いのです。

さすれば貴方に最高の快楽を差し上げます。
闇の中に紛れてしまう、水中で誰にも気付かれぬことなく絶命する小さな水泡の様な。

ただ一時の快楽。

それと──



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