インベンション。

□私は赦免を欲し、足掻く
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全身が血ばんでも。
屍臭がこびりついて取れなくても。

凶器に塞がれた私の手は、あなたに何か出来るでしょうか。






「ご主人、お願いします!」

「お願いします…って言われてもなぁ…」

ライはいかにも困った、という表情をして、コトコトと音をたてる鍋をお玉で掻きまぜた。

すでに太陽が地平線へ沈んだ頃。
看板は下ろされて、食堂は灯り一つなく真っ暗で、隣接する台所にはライとシンゲンがいるだけだ。

ライは仕上げに鍋へコショウを一振り入れると蓋をして、火を止める。
それからシンゲンの方に向き直った。
バツの悪そうな顔で。

「あのさ。オレ、ストラを使えてもその原理はいまいち分からないんだよ。
だから……悪いけど、教えられない」

「そう、ですか…」

ライがもう一度「ごめんな」と申し訳なさそうに告げる。
それに対し、ふるふると弱く首を横に振ったシンゲンは笑っていたが、彼が少し沈んでいると感じたのはライの気のせいではない。

──シンゲンが『ストラを使いたい』と急に言い出したのには、ちゃんとした理由がある。
だから目的を成す事が出来ぬと分かり、彼は落ち込んでいるのだ。

その理由を知るライとしては彼の力にはなりたい、と強く思っている。

得意分野である料理ならば何とかなっただろうが、ストラは特殊な体術だった。
故に、体術に精通している者でなければ無理なのだ。

ライは少しばかり体術の心得があるので、確かにちょっとした治癒──小さい傷口を防ぐくらいならば簡単に出来る。
しかし、それを行うのと教えるのでは話は全く違う。

少しかじった位では基礎さえ教える事が出来ない。


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