インベンション。

□偶にはこんな朝も
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窓とカーテンの僅かな間から、眩しい朝日が射し込んでいる。
その光によって徐々に、まどろんでいた意識がはっきりとしてくる。

日差しが起きろと急かすけれど、まだ動きたくなかった。
最近冷えてきた朝の空気が包まれる部屋内で、温かい布団はとても離れがたい魅力を持つ。
それと夢と現の狭間を漂うことは、まるで空を飛んでいるかのような浮遊感を得られるので気持ちが良い。この感覚は覚醒直後の今この時しか味わえないのだ。

また、何故だか今朝は身体がだるい。
加えて、その反対に心地もよい。

だから余計に動くことが億劫で、自分を現へ引き戻そうとする日の光から逃れたくて身体を反転させた。

すると何かが腰の辺りを滑った。
否、滑ったというよりは動いた。

少し冷たく硬質な感触で、金属のようだ。でも自分はそんな物を寝室に持ち込んだ覚えはない。
変だなと思うより先にその硬質な物が再び動く。
しかも今度は確かな意志を持って、腰にそっと触れてきた。

一体、これは何なのか。

それを確かめようと手を伸ばしかけたが、謎の物体が自分を手前の方に引き寄せたので指は何も掴むことなく空を切る。
代わりに自分が得た情報は――予想もしなかった事。

自分しかいない筈の部屋に誰かいる。
いや、ベッドの中にいる。
しかも直ぐ隣に寝ていて、その人に抱き竦められている。


これには酷く驚いたが、驚くべき事実はそれだけではない。
現在、背中に感じる腕の感触は確実に女性の細いそれではない。自分と同じか、もしくはそれ以上の逞しさがある。つまり成人した男のもので。
今、自分は同性と抱き合ってベッドにいる。
これには流石にまどろんでいる訳にもいかず、勢いよく温いベッドから跳ね起きた。

そして同時に、隣を見た。
…というか自然に隣の人物が目に入った。


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